ホメオスタシスとアーユルヴェーダ(Ayurveda)

恒常性維持機能の改善にはアーユルヴェーダ

 中国に漢方があるようにインドには印方と呼ばれるものがあります。

それが、5000年の歴史を持つインド伝統医学「アーユルヴェーダ」ですが、アーユルヴェーダとは、サンスクリット語で生命の科学”と言う意味です。

Ayurが生命、Vedaが科学もしくは知識をあらわします。アーユルヴェーダは5000年以上前、インドの学者や健やかに生きることを求める人たち(賢者達)がが生命の真理を一つの体系にまとめたものですが、この知識体系は賢者達の宇宙創造に対する理解を追求する精神と共に発展してきたものです。

アーユルヴェーダでは人間は小宇宙であり、大宇宙である外部環境と一体であり、人間の個別的存在は宇宙全体から切り離せないものであると考えています。

そしてアーユルヴェーダでは、すべてのものが無生物(物質)の五大元素で構成され、人間を含むすべての生物は五大元素と魂とも解釈される純粋意識の結合体であると考えているのです。

この様に考えることは物理学でも、哲学でも宗教でも通じる普遍性があります。

緑豊かな自然の中で一体感を感じるとき、バスタイムなどで、心地よい空間にとけ込むような感覚があるとき、調和の取れた素晴らしい音楽を聞いたとき、とても安らかな気持ちになるときがあります。

本来人間の構成物質も、机や木々や水などの構成物質も炭素を基本としてさほどかわりがありません。構成が違うだけで同じものだと考えることができます。

そして、それを動かすものは、人間の中では目に見えない純粋な無意識であり、それが、私たちの健康や人生を動かしているものと理解できます。太陽系が太陽を中心にバランスを持って動いているのも、人間の細胞の中の分子や原子などのレベルがバランスを持って動いているのも同じという考え方です。

一つ一つの細胞、その中の分子がバランスを持って正常に動いている時、人間の心身の健康が維持されるのはイメージとしてつかめると思います。

アーユルヴェーダは人間をミクロコスモスと考え、そのバランスを司るにはどのような力が必要かを研究しているのです。

嗅覚を刺激する心地のいい石鹸などのアロマは私たちをとてもいい気分にさせてくれます。

人間の生理機能は、心地のいいときに脳内から体の免疫に有益なホルモンを出すことも知られています。そして、脳波は穏やかに発生され、表情や言動は他のものにも心地よく影響し、そして、他の人の気分や生体の健康にも影響します。

そして、それが伝達していくイメージは何となくつかめると思います。

 この様な総合的なバランスを司る意識的な営みがアーユルヴェーダや漢方で、もっと平たく言えば、人間が悠久の昔から体に覚え込んだ、健康バランスを保つためのホメオスタシスでもある、自然のリズムに合った生活リズムと方法でもあるのです。

それを、明確にわかりやすく理論化、実践しようとするものがアーユルヴェーダや漢方なのです。

そして、リラックス状態で心地のいいことが本来の人間のリズムと宇宙のリズムに合ったことであると考えられているので、本来のアーユルヴェーダや漢方はとても心地のいいものであるのです。

心地のいいことを多くする、これが健康を維持する最善の方法です。

ホメオスタシスを向上させて自律神経失調症を治癒させる方法として、温泉療法などもあります。この日本の風習はアーユルヴェーダと通じるところがあります。温泉に一週間ほど滞在し、体の恒常性を正常に戻す昔からの知恵です。バランスを崩した人間のリズムは、温泉の規則正しい食事の時間と、寝起きの習慣で否応なく改善され、何回も温泉につかることで、湯あたり現象を引き起こします。この湯あたり現象は、恒常性機能が著しく狂ってしまった現代人が元々のバランスを取り戻すときに一時的にギャップが生まれ、体がとてもだるくなったり、頭痛や、腹痛、食欲が無くなるなどの状態に陥ることです。その状態は2、3日で収まり、その後は日増しに温泉と規則正しい生活が心地よくなり、景色が明るくパアと開け、世界が変わる感覚があります。その後は実生活で規則正しい生活を維持し、夜はバスタイムを楽しむ事で、毎日の健康を維持することができます。

深い睡眠と、毎朝の心地よい便通、そして、規則正しい食欲が健康を感じさせてくれます。

アーユルヴェーダも漢方も温泉療法も要は毎日を健康に生きるための知恵なのです。

何でもそうですが、この様な知恵には理論体系を作って、独特の方法を提示しようとする傾向があります。それによって、独自のシステムを作りだしていると言っていいでしょう。

 アーユルヴェーダは、3つの生命エネルギーを基本に考え、ドーシャと言う呼び名で説明しました。3つのドーシャはそれぞれ2つの元素の組合せで出来ていてサンスクリット語で、ヴァータ、ピッタ、カパと呼ばれますがヴァータは風と空の組合せでピッタは火と水の組合せでカパは水と土の組合せで出来ています。ヴァータ、ピッタ、カパは体内で特定の機能をもっていますが個別に働くのでなくこの3つが調和して働く時のみ、完全な健康が得られるのです。

そしてこの3つのドーシャはライフスタイルの変化、時間、季節により絶えず変化しています。体内のドーシャの性質及び、日常生活でのドーシャの性質を理解すれば、ドーシャのバランスを取り戻し、健康の回復ができるのです。この様な言葉で説明されると何となく神秘的な感じがしますが、実はこれは人間の生体の維持のための機能の分類であって、簡単に言うとヴァータは運動を司る機能で神経等の働きのことです。ピッタは消化と代謝機能のことで血液や胃腸などの働きのことで、カパは人間の組織とその結合の働きのことなのです。このバランスと働きを高めるのは別にアーユルヴェーダでなくても健康によいのは当たり前のようにわかります。しかしその方法は良くわかりません。それを細かく分析し、毎日の生活スタイルや生き方を説明し、指導するのが、アーユルヴェーダや漢方、その他諸々の諸法なのです。その中でも、アーユルヴェーダは心の問題、運動、代謝、体の構造、時間やリズム、五感などあらゆる方向から研究し、詳細にわたって方法を説いています。とても理にかなっていて驚くばかりです。あの仏陀もアーユルヴェーダを熟知していたとのことです。アーユルヴェーダは欧米や中国などにその精神や哲学、知識が広まり、世界中のライフスタイルに影響を与えています。

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