マクロビオティック (Macrobiotic) とは

マクロビオティック (Macrobiotic) という長寿法としての食生活法や食事療法です。

「玄米菜食」「穀物菜食」「自然食」「食養」「正食」として広く普及しています。

マクロビオティックの語源は、ギリシャ語でmacro=偉大な/大きな、bio=生命の/活き活きした、tic=術/方法、からなる造語です。この語源は、紀元前5世紀に生きた西洋医学の父、ヒポクラテスを初めとするギリシャの先哲たちが、健康で長寿の人たちやその社会を表す言葉として使っていました。ヒポクラテスは、自然な生活法、特に環境と調和した日々の食物の選択法や調理法を人々に教え、「食を汝の医とし、医を食とせよ」という哲学を唱えました。

そしてこの大自然と共に生きる食事法は、桜沢如一氏により『マクロビオティック』の名で世に紹介されました。日本古来の食養生に中国の易の陰陽を融合した実用的な哲学で、まずは欧米を中心に広まり、海外セレブたちの健康法として広く知られるようになりました。現在、日本で話題になっているものは、いわば逆輸入のような形で伝わったものなのです。歌手のマドンナや、ハリウッドスターのトム・クルーズらが愛好家として雑誌等で紹介されたことで日本でも注目され始め、欧米型の食生活の浸透とともに、生活習慣病への恐れも深刻になりつつある昨今、昔ながらの日本の食生活を見直す食事方法として、注目を集めています。そんなマクロビオティックの根本にあるのは、人間が本来持っているはずの、自然のバランスを取り戻すということです。そもそもストレスや肌荒れ、肥満などは、身体のバランスが不自然であるために起こるものなので、自然のバランスを取り戻せば身体や心の不調が軽減され、毎日は快調になるという概念です。このようなマクロビオティックの基本となる宇宙や陰陽の法則は、世界中で何千年も前から言われてきたことなのです。

食べ物には、栄養やエネルギー源としての働きのほかにも、判断力を向上させ、精神を高めるはたらきがあります。毎日の食べ物が私たちの血や肉を作っているので、私たちは食べ物そのものということです。だからこそ、なにをどれだけ食べるかによって考え方や行動にも影響が出て、その結果運命までも変わっていきます。 食べ物の質や量によって私たちの体やこころが微妙に変化するからです。たとえば糖分を例にあげてみると、精製した砂糖をたくさん使ったお菓子をと食べると、体内のカルシウムを大量に使います。毎日たくさん食べていると、心にも体にもその影響が少しずつ出てくるようになります。 カルシウムが不足して酸がたまり、疲れやすくなったりイライラと落ち着かなくなったり、また悲観的になりやすくなります。さらに、糖分の過剰摂取は肝臓を疲れさせます。肝臓は東洋医学では「怒り」の臓器で、 肝臓の働きが悪くなると、ちょっとしたことでも怒りっぽくなるといわれています。 また、糖分は体や心を緩めリラックスさせる働きがありますが、毎日習慣的に食べたり飲んでいると、体が冷え、拡散の働きにより集中力を失います。あるいは体や心の動きを鎮めたり止める働きがあるので、やるべきことを次々に後回しするようになります。

一杯のコーヒー、一切れのケーキを食べることで、私たちの血液は微妙に変化しており、食習慣が私たちの体や心にまで大きく影響し運命まで変えるのです。

食欲に支配されて食べ過ぎるのではなく、食欲を支配し、食べ物をコントロールすれば、健康な生活への道に向かう、その理(ことわりノ方法)を説いたのがマクロビオティックです。その土地の環境にあったものを食べる。頭から尻尾まで皮も全部食べる。 そしてYIN(陰)とYANG(陽)の調和、これがマクロビオティックの真髄です。 アメリカを始め全ヨーロッパで、特に環境問題や平和運動をしている人々から絶大な指示を得ています。自分の心と体の平和と安定を守ろうとすることで、まったく無意識のうちに地球環境を守ることに繋がる食事方法だからです。

マクロビオティックの基本原則は、一物全体、身土不二、陰陽調和、穀物彩食などという項目がありますので、ひとつひとつ詳しく解説していきましょう。

一物全体(いちぶつぜんたい)

食べ物は、あるがままに、丸ごと食べてこそ身体は整うという考え方です。可能な限り野菜は皮付き、根付き、葉付きで全部食べる。魚も頭、皮、骨ごと全部食べる。穀類なら出来る限り精白しないで全粒穀物として「全部まるごと」食べるということです。ヨーロッパや米国では、精白したパンではなく、胚芽やフスマがはいった茶色い色のパンが出る事が多いようです。世界の食文化を見ると、少し前まではほとんどが未精白の米や小麦を食べていました。これを精白するようになってから、つまり部分食になってから健康状態が悪くなったのです。たとえばサトウキビが原料の砂糖でいえば、未精製の状態では黒砂糖ですが、あの中にはミネラル、特にカルシウムが精白した砂糖の数百倍も入っています。これを真っ白に精製してしまうと、もともと含まれていたカルシウムを取り去ってしまうのですから、体のカルシウムをどんどん使うことになってしまいます。カルシウムは体の酸化を止める働きがあります。丸ごと全部食べる、できるだけ精白していないものを選んで食べると、知らないうちに食べ物が体を調節してくれます。

身土不ニ(しんどふじ)

人間も植物も全て生まれた環境と一体である、ということから、住んでいる土地の産物をとれる時期(旬)に食べれば、身体のバランスが整うという考え方です。四季のある日本の場合は、季節ごとの旬を口にすることが健康につながることを意味します。食べることは、栄養やエネルギーを体に取り込むということのほかに、外の環境と体内の環境を調和する、住んでいる環境になじむということでもあります。つまり、身体と環境は一つであるということです。例えば、寒くて乾燥している北ヨーロッパや北アジア地域が発祥の食べ物である肉やヨーグルト、チーズは脂を多く含んでいるため、寒さをしのぐための高いカロリーが得られて体を温めます。しかし日本の気候で暮らしている私たちがこのような食材を多くとってしまうと、体が温まりすぎて暑くてたまらなくなります。そして逆に、体を冷やす熱帯地方の食べ物、果物や辛いもの、甘いものなどが欲しくなります。すると暑いところでも過ごせるように体が冷えてきます。その結果、頭はカッカしやすく、足腰は冷えるというアンバランスな体になってしまうのです。体を熱くする肉や油脂が多い北方のものと、体を冷やす辛いものや果物や南方のものが、季節に関係なく無秩序に食卓にのる食生活では、体のバランスがとれにくくなり、健康を害する原因になってしまうのです。

陰陽の調和

 陰陽とは、中国の易経にある考え方で、物事にはすべてに陰と陽があると言われています。この陰陽を人間の健康や、それを支える食べ物に適用するのも、マクロビオティックのポイントです。陰陽の偏りがないよう毎日の食事で中庸に保つことが大切だということです。陰陽は絶対的なものではなく、何かと比べて陰であり陽であると考える相対的なものなので、最終的に1回の食事、あるいはその日のうちの食事を通して全体を中庸に近づけるようにします。

<食べ物の陰陽について>

食べ物には様々な栄養のほかに、体を冷やしたり温めたり、あるいは弛めたり引き締めたりする力もあります。現在のマクロビオティックを広めた桜沢如一氏は、ナトリウムとカリウムの量と陰陽論をヒントに食品を「陰性」「中庸」「陽性」に分類しました。もとが中医学ではないため、この分類は中医学の陰陽論に基づく分類とはかなり異なりますが、具体的には、産地の寒暖や形而上の特徴から分類していきました。牛乳・ミカン類・トマト・ナス・ほうれん草・熱帯産果実・カリウムの多いものなどを「陰性」とし、玄米、葛粉は「中庸」、塩や味噌・醤油・肉などナトリウムの多いものは「陽性」としました。

 陰の働きをもつ夏や熱帯にできる作物は、カリウムを多く含む、温暖な気候風土でとれる、育ちが早い、水分が多くて柔らかい、地上でまっすぐのび地下では横にはうなどの特徴があります。食材例としては、なす、じゃが芋、ピーマン、トマト、筍、西瓜、メロンなどで、味覚的には酸っぱい、辛い、えぐ味のあるものです。このような作物は広げたり上昇する働きを持っています。ですから私たちが食べると汗腺がゆるんで汗が出やすくなり体が冷え、暑いところでも涼しく過ごせるというわけです。また、血管が拡張して血圧が下がるので、行動が制約されてゆっくりした動きになります。例えば、キュウリは利尿や解熱・発汗の働きを持っています。夏に食べると汗が出て体が冷えてちょうど良く、体外の環境と体内の環境が調和した、と言うことです。ですから夏野菜や熱帯の食べ物を寒い冬に食べると言うことは体が冷えて、冷え性になるということを意味しています。ガンやアレルギー、不妊、生理不順、生理痛、腰痛、関節痛、リューマチなど、ありとあらゆる病気は体温を上げることで治癒へ向かうと考えられています。体が不調の時、病気の時はキュウリだけに限らず、トマトや唐辛子、果物など体を冷やすものは避けた方がよいということです。

陽の働きをもつ寒い地域や季節にできる作物は、ナトリウムを多く含む、涼しく寒いところでとれる、ゆっくり育つ、硬く水分が少ない、地下では下にのびるなどの特徴があります。食材例としては、玉ねぎ、ゴボウ、にんじんなどがあります。このような作物は収縮、下降の働きを持っています。私たちがこのような引き締める性質を持った食べ物を食べると、汗腺がしまり、血管が収縮して体温を逃がさず、体が温まるようになります。

<調理によって陰陽調和>

食べ物には体を冷やし、緩め、拡散・上昇の働きを持つ陰の食べ物と、体を温め、引き締め、凝縮・下降の働きを持つ陽の食べ物があり、日本では四季に合わせた食べ物を摂取することが陰陽調和の原則ですが、調理の手を加えることでも陰陽を調和させる事が出来ます。

例えば、トマトは体を冷やし緩める働きがある夏の食べ物ですが、熱を加えじっくり煮込めばトマトの陰の力、冷やし緩める力が少なくなります。また、下向き、収縮と言う陽のエネルギーを加えば良いのですから、フタをして煮込む、収縮のエネルギーを持つ塩を入れる、魚など動物性食品と一緒に調理する、あるいは付け合わせとして食べる。などによって、陽の力が加わって、食事全体に陰陽の調和が保たれるというわけです。

しかし、あくまでトマトが持つ基本の陰の力は残っているので、調和を取ったからと言ってあまりたくさん摂取するのはよくありません。

穀物彩食(こくもつさいしょく)

玄米や雑穀などを主食に、野菜や豆類、海藻類を中心とした食事をするということです。肉類や卵乳製品など、動物性の食材は基本的に使用しません。(絶対に食べてはいけない、という事ではありません。)また、調味料は昔ながらの製法で時間をかけて作られた塩、味噌、醤油を使用。甘味は米飴、メープルシロップ、黒砂糖などを使用。出汁は昆布、干し椎茸からとり、食材そのものが持つ旨味を引き出します。なぜ穀物を主とした食事なのかというと、人間の歯が穀物を噛む臼歯20本、菜類を噛みきる門歯8本、肉を噛む犬歯4本というつくりであることからも、人間が主に穀食動物であることは自然に理解できます。ちなみに、犬や虎などの肉食動物は、ほとんどの歯が犬歯で出来ているようです。穀物の中でも『中庸』の玄米は、明治初期の頃から栄養や食物繊維が豊富に含まれていると主張されてきましたが、これは1980年代以降、栄養学でも確固として認められてきた点です。穀物を主食として副食と明確に分離するという日本の伝統的な食事は、医学的、栄養学的にも優れていると世界中で見直されています。また初期の頃から、欧米風の動物性食物の多い食事とそれに起因すると考えられる疾病の多発、食肉を得るための多大なエネルギーの浪費や環境汚染や飢餓問題、非効率的な消費や病気の増加による経済的な損失を批判してきました。日本国内にとどまらず、世界各地に広がっている理由として、こうした考えが受け入れられている面もあるのです。

このようなマクロビオティックの概念は、食育で著名な明治時代の薬剤監であり医者であった石塚左玄の考え方を基盤としています。桜沢氏は左玄の結成した食養会で活躍することを通して食事療法(食養)を学び、独自に研究しました。当初、桜沢氏は左玄の考え方に従い、鳥・魚・卵を少しなら食べてもよいとしていましたが、晩年にそれらも食べない菜食が正しいという見解に到っています。Reply:// 伊藤さん、お便りありがとうございます。

コーンブレッド、やっぱりできたてがおいしいですよ!ぜひ楽しみにしていて下さい。

人間も動物の一種類であるから、本来は自分の縄張り周辺でとれるもので充分生きていけます。日本昔話に出てくるような食事です。でも人間にはもちろんおいしい物をたくさん食べたいという欲求があります。それを我慢するのではなく、本当に自分の体を愛してあげるということをいつも基準にしていれば、自然とバランスのとれた食生活が出来るのではないかと思います。しかし、現代社会ではストレスがあったり肉体的にも精神的にもハードな仕事で交感神経が興奮しすぎている場合があり、そんなときは甘い物や肉、脂っこい物はほしくなってしまいます。そんなときは、それもたまには良いと思います。自分がその暴飲暴食に支配されなければよいのですから。現代は人間の欲求のままに、いろんな食品が売られています。

それを選ぶのは私たちなので、体が本当に喜んで生きるものを選んで食べることを原点に、あとのものはちょっとした人生のおまけ・お楽しみなんだという気持ちであれば良いのではないでしょうか。

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