免疫力

 福島の原発事故により大気中に放出されている放射性物質。

私たちにとっては、よくわからない目に見えないものであるだけに驚異です。

政府の発表や、国際機関の発表の食い違い。テレビに出てきて安全だと言い続ける学者の人たちへの、電力会社や原発メーカー、政府からの大金の援助などの記事。

牛肉だけでなく、子ども達までの内部被曝。世界中の学者の中でも、280キロ圏内は人が住まない方が良いと言っている人もいます。

どのような情報が正しくて、間違っているのかももう全くわかりません。

しかし、よく考えてみると、放射線だけでなく、私たちの身の回りには、多くの目に見えない脅威があります。

例えば、たばこの副流煙や排気ガス、テレビや電子機器からでる電磁波、携帯電話のマイクロ波、合成着色料や合成保存料などの食品添加物、カビや、魚や肉のお焦げ、山菜にふくまれるあく、アルコール、農薬や成長促進剤、牛乳には出産前のウシから牛乳を得るために女性ホルモン、環境には多くの化学物質、ウィルス、そして日光までが紫外線の驚異です。そして運動だけでなく、日常生活のストレスにまでも活性酸素の脅威があります。その新たな大きな一つに放射線が加わったのです。

そこで私たちは考えます。例えば、役者の山本太郎氏が立ち上げたプロジェクトで、福島の子ども達は5年後10年後には25人に1人がガンで死亡すると言っています。そうであれば後の24人はなぜガンにならないのでしょうか?ヘビースモーカーが全員ガンになることはないのはなぜでしょうか?

この答えは、免疫力なのです。免疫力の違いが、その結果の違いを生んでいるのです。

私たち個人でどうにかなることは、自分の身体の免疫力を高めることです。そして驚異からできるだけ遠ざかることですが、その驚異が目に見えないし、又、自分以外の責任でいつどこで何が起こるかわかりません。今回は、私たちの身体への色々な驚異を考えながら、免疫力について特集したいと思います。

放射線が身体に与える影響

放射線とは,照射した物質に電離(イオン化=物質をプラスイオンとマイナスイオンに分離すること)とをおこすことのできる,高いエネルギーの流れのことです。

放射能は物質がもつ,放射線を出す能力のことで、放射性物質は放射線を出す物質のことです。

さて、放射線の被曝は,人体に悪影響をおよぼす可能性があります。放射線が,細胞のDNA(デオキシリボ核酸)など,重要な生体分子を傷つけることがあるからです。

放射線が直接,生体分子を傷つける場合と、放射線が体内の水分子を分解し,「活性酸素」を生じさせ,この活性酸素が生体分子を傷つけるのです。

このように放射線は、正常な細胞や血球、DNAを傷つけて変異させる可能性が高いのです。しかし、直接放射線が生体分子を傷つけるよりも、間接的に活性酸素を出したりして傷つける可能性の方が高いと言われています。

そう考えると、活性酸素の発生は激しい運動や、ストレスなどが大きく発生させる原因であることも知られています。そうであれば、放射線と同じような脅威が実は普通の日常生活の中にもあるということにもなります。

遺伝子を傷つける因子

ガンは、細胞の遺伝子異常により細胞がガン細胞化することによって起こります。

遺伝子に傷をつけ異常を起こさせる因子を発ガンイニシエーターといいます。

ガン細胞の細胞分裂を促して、ガン細胞を増殖させる因子を発ガンプロモーターといい、様々な環境因子や発ガン物質が世の中には存在しています。

特に、喫煙は数十年にわたる調査での一貫した結果と、数百の疫学調査により、数多くの部位のガンとたばこの関係が確認されて、強い相関があることが明らかになっています。

又、食生活においては、脂肪とカロリーの摂取を制限することは、ある種のガンの危険率を減少させる可能性があると明らかとなっていたり、脂肪に富んだ大量の肉と大量のカロリーを摂取する人々は、特に大腸ガンにおいて、ガンの危険が増大することが有るなど、食生活は偏らないことが大切だと言うこともわかります。

近年になって日本人に大腸ガンや乳ガンが増えてきた原因のひとつには、食生活の欧米化による動物性脂肪の摂取の増加と食物繊維の摂取不足で、腸での便の停滞時間が長くなって発ガン物質が大腸粘膜と長時間接するため大腸ガンが多くなったと指摘されているように、日本人の身体に合わない食生活というのも要因の一つだそうです。

そしてなによりもストレスですが、ストレスは、様々なメカニズムにより活性酸素を発生させたり、血流の低下をおこすなどして、人間が持つ自然な免疫力を低下させ、多くのガン因子に影響された身体を守りきれなくなり、ガンを増幅させる確率が上がるのです。

ストレスや不満にいつもさらされている心身は、以上に加えて、身体の体温をも低くしてしまい、ガン細胞は低い温度を好むため、平常時体温が36.0℃を下回るとガン細胞が活発に活動し始めるのです。その上、体温低下で免疫力も低下するのです。

より高い免疫力を身につける。

免疫力のほとんどは、血液中の白血球に存在しています。本来生まれながらにして人間が持っている、自分で自分を守る力ですので、この能力を健全に保つことで、見えざる驚異に対して強い安心を得ることができるはずです。

白血球の内、体内の細菌や異物を食べてしまう細胞のマクロファージ、NK/ナチュラルキラー細胞、T/ヘルパー細胞、T/キラー細胞、B細胞などのリンパ球や、顆粒球(好中球、抗酸球、抗塩基球)などが単独あるいは協力しあって働き、体外から体内に侵入した細菌、ウイルスなどの抗原や、体内で発生したガン細胞などの異物に対して絶え間なく攻撃し身体を守っています。

 

まず、リラックスモードの副交感神経が優位になるとリンパ球が増えます。逆に、興奮モードの交感神経が優位になると顆粒球が増え、ガンなど組織の破壊を引き起こします。

(安保徹教授(新潟大学大学院医歯学総合研究科教授)著書「免疫革命」を参照)

このように考えると、今回のテーマの細胞や遺伝子の変異の驚異に対しては、副交感神経が優位のリラックスモードがいいことがわかります。

 

NK細胞はナチュラルキラー細胞の略で、リンパ球として身体に侵入した異物に反射的にとびかかり、ガン細胞を初期に発見し攻撃することでガンの発病を防ぐ大切な細胞です。

細胞を殺すのにT細胞とは異なり事前に感作させておく必要がないということから、生まれつき(natural)の細胞傷害性細胞(killer cell)という意味で名付けられました。リラックス状態でリンパ球であるNK細胞を増やし、それを活性化して、よく働かせることが、人間が生まれつき備える、ガンなどに対抗する最も大きな力であることがわかりました。その上、正常な自己の細胞は攻撃しないのです。

このNK細胞はリンパ球で有り、副交感神経が優位でリラックスしていると増えて、血管が広がり血流も増えて、がん細胞が苦手な高体温の環境を作り出し、隅々まで行き渡るという好循環を生み出します。

ストレスと免疫

ところが、そのガン担当のNK細胞にはストレスに大変弱いという性質があります。

NK細胞の機能は肉体的ストレスばかりでなく、精神的ストレスの影響も受けている環境では低下してしまい、本領を発揮することが出来ません。ストレスは、あらゆる方向から免疫細胞の機能を低下させます。

ガン患者の発病までの経緯を調べると、その70%の人に過去数年にわたるストレスや過労、悩み、薬の常用が見られます。

 

その理由には、体調を調節するホルモンであるステロイドホルモンが影響しています。

ストレスは脳の視床下部という部分を刺激し、脳から副腎に信号が送られ、ステロイドホルモンを分泌し、免疫細胞に作用をします。

このステロイドホルモンは副腎皮質から分泌されるホルモンで、生理的には早朝起床する前に分泌されるので、この刺激によって目が覚め、日中の交感神経優位の時の体の状態をつくり出そうとするのです。

そして、このステロイドホルモンは突然に大量の出血をするなどの異常時や、血圧が急激に下がったショック状態の時などのような体の緊急時にも大量に分泌されます。

それは、このようなときにステロイドホルモンの作用で血管は収縮して血圧は上昇し、そのショック状態から脱出しようとするのです。朝起きるときのメカニズムも同じです。要は覚醒しようとするのです。このようにして、体はステロイドホルモンの働きで緊急事態を乗り切ろうとして、交感神経を極度に緊張させてステロイドを分泌します。

そして、すべての体の反応はこの緊急事態に対処するために総動員され、それ以外の活動である、ガンを治すリンパ球の免疫反応も止まってしまい、毎日何千もできる、ガンに対する攻撃は他の免疫活動とも一緒に中断されてしまうのです。

その上、人間の体は、ストレスが長く続いた場合、それを何とかしようとして、副腎からショックを和らげるステロイドホルモンを分泌し続ける仕組みになっているのです。

さらに、免疫力低下は身体の異常細胞を察知する力も落としてしまいます。こうなるとガン細胞はNK細胞に攻撃されることなくどんどん増殖していくのです。又、自律神経のバランスを崩すストレスは、不眠や食欲不振、血行不良などを起し、栄養が身体全体に回らなくなるだけでなく、血流とともに全身をめぐるリンパ球も満足に循環できなくなり、さらに免疫力を低下させるという、悪循環を招きます。

リンパ球を培養するとき、その培養液の中にステロイドホルモンを入れてその働きを調べて見ると、リンパ球の活性は停止し、そればかりか、量が多いと培養していたリンパ球が死んでしまいました。

顆粒球と活性酸素

色々なストレスで興奮モードの交感神経が優位になると白血球の中の顆粒球が増えて、ガンなど組織の破壊を引き起こします。その理由は活性酸素の発生です。

活性酸素は外から取り入れる酸素で発生するものよりも、心身のストレスが原因で発生するほうが圧倒的に多いのです。過剰な運動だけでなく、精神的なストレスの方が圧倒的に重要とされるのが内因性のストレスです。

実はストレスで増えている顆粒球が、死ぬ時に放出するのが活性酸素なのです。

増えすぎた顆粒球は消化管などの再生上皮に辿り着き、その活性酸素で組織を傷害して死んでいくのです。組織が酸化しますので老化はもとより、胃炎、胃潰瘍、痔、白内障、ガンなど組織破壊系の病気を招いていきます。

ストレスと心身調整

ストレスに対しては、呼吸法やヨガ、太極拳といった、自律訓練法、バイオフィードバックが有効です。

又、栄養からは、ストレスのある脳に対しての栄養としてビタミンB1,B2,B6,B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンなどのビタミン群や、脳のエネルギー源糖の代謝を促進する豚肉やうなぎなどのB1、そしてリラックスに欠かせないセロトニンを作る材料であるB6はにんにく、バナナに含まれ、さらに脳の神経伝達細胞を作成するカルシウムも一緒に取るとよいでしょう。

潜在的ストレスと免疫

しかし、ストレスの内でも表面的に自覚するものは、顕在的ストレスといわれるもので、自覚して対象から遠ざかったり、解消できるのでそんなに問題ではありません。

最もやっかいなのは、自覚できない潜在的ストレスなのです。一時的に顕在するストレスは、そのストレスから遠ざかれば、通常の免疫系の修復システムで心身は回復します。

しかし、潜在ストレスと言われるものは、自分自身の心の深くにあるものと、本来純粋に自分が望む超深層とのストレスですので、絶えずストレスにさらされていることになります。

これが一番、免疫系に障害を起こすのです。

潜在的ストレスは、潜在の心に宿っているのです。

潜在的ストレスの因子

潜在的ストレスの因子の一例を挙げてみます。

/自分にとって大切な人に、自分をわかって欲しいと思う。/否定されるととても辛い。/大事な人から見捨てられるようになったり、いなくなったりすることを考えると不安である。/人を批判する事に罪悪感を感じる。/自分の気持ちや感情を抑えてしまう。/自分らしさがわからない。/人にものを頼むのが苦手。/思っていることを容易に口に出せない。/人の顔色や言動をとても気にしてしまう。/辛いことがあっても我慢する。/自分の考えをとおすのに躊躇してしまう。/他人の意見にすぐに賛同してしまう。/自分一人で物事を決めることが出来ない。/とても甘えん坊だ。/自分だけを頼りにできない。/他人から気に入られたいと思う。/自分の味方や、肩を持ってくれる人が自分には必要と思う。/人の期待に応えようと頑張ってしまう。/初対面の人に嫌われないか、また上手に対応できるか心配になる。/自分の判断に自信が無い。/自分がきずつきやすいのを人はわかっていないと思う。/人に頼られるような人間ではないと考える。/人の指導などできる資質はない。/人にしたがっている方が楽だ。/必要なこと、求める事を得られないととてもがっかりする。/

以上が実は潜在的ストレスの因子なのです。このような心的状況であれば、免疫力は正常に働いていません。それも、潜在的ですから自覚もなく絶えずです。

一時的なストレスで、そのストレスから逃れることのできるものと比べるといかがでしょうか?このようなストレスを解決することが最も大切なのです。

潜在的ストレスの分析

潜在的ストレスは大きく二つに分けることができます。一つは自己抑制、もう一つは依存です。

●自己抑制

自己抑制は別名「イイ子度」ともいいます。筑波大学の宗像教授によって名付けられました。

イイコ度が高くなるに従って、周りの人や相手から嫌われないために気に入ってもらうため自分の気持ちや感情を過度に抑えてでも、相手や周囲に敏感に合わせてようとするのです。

葛藤やストレス、わだかまりが増すことになりますし、なにより、そんな自分自身を好きになれません。自分らしさを感じられずにいます。逆にいうと人によっては、我慢強い人、辛抱強い人と見られることもあります。「いい人ほど早死にする」は、このような傾向からの見解です。

心理的な苦しさを自覚していないけど、身体症状として、何故か人といると疲れてしまうことになります。

さらに、ひどくなってくると相手や環境次第では、絶えず抑うつ的になります。

気に入られるために、仲間はずれにならないために、自分を分かってもらいたくて、自分を抑えて生きていくとそうなります。

さらに、自分の気持ちや感情というものをほとんど出さないし、出せない状態にまでなってきます。

逆に、率直で正直な人と呼ばれればいいですが、どうせ全員に好かれることなんか出来ないんだからと思って、云いたい放題で、我儘で自分勝手な人と思われて生きている人は、以上の驚異から無縁かも知れません。

そして、このような人であっても、率直で正直な人と受け止めてくれる人を大切にすることが、免疫力を最大限に高めるための生き方だともいえます。

●依存

依存、誰もが互いに支え合い、助け合いながら生きています、それはそれで素晴らしいことです。しかし、自らの愛情の饑餓を埋めるために愛情を求めすぎたり、過剰な依存心を抱えていることが、実は大きな潜在的ストレスになっているのです。

一人で生きていけるという自信は、相手に過度な期待を持たず、なにかを乗り越えることで自己成長を遂げ、生き方や自分を見つめてきたからでしょう。

逆に、対人(愛情を含む)や物事への依存心が高すぎるということは、自分の主体性が生まれず、対人(愛情を含む)や物事に対しての、無力体験を味わうことになります。

人間の根本的な本能である、存在欲求にある愛という受け入れられる欲求、そして生存欲求である生きるという欲求が強くストレスを発生させます。それも潜在的にです。

愛情依存度が強いというのは甘えん坊度が高く、対人依存度が強いというのは、イイ子度が強いと同様に、慢性ストレス源を抱えているようなものです。

なぜなら、他人とは、けっして自分の思い通りにはならない存在で、自分が勝手に願い望むようには都合よくは愛してもくれないし、依存させてもくれないのです。

愛情や対人依存度が強くても、身近にそれを満たしてくれる相手がいると精神的にとりあえず安定していられますが、そうした人の存在に支えられることで、とても幸せにまた、強気に振る舞えたり、愛情依存や対人依存度が低いかのように見えることがあります。

しかし、そうした相手を失ったり、また、そうした相手が存在しない事を想像しただけでも、不安感があらわれやすくなりますし、実はいつもその不安というストレスにさらされているのです。

ひどくなってくると、イライラしたり、孤独感に襲われたり、抑うつ的になったり心理症状を出しやすくなります。

隠れ愛情饑餓や、隠れ依存心が存在するのに気づかないこともあります。例えば、愛情欲求や依存を諦めて押し隠し、自分の中に存在する愛情欲求や依存心を否定しながら生きてたりする場合です。

たとえば、家庭では良き夫や父親を演じながら満たされない愛情欲求を、愛人によって満たす、わがままを云うことで、相手の関心を得ようとする、クラブやホストクラブに通ったり、何かに極端に夢中になったり、孤高を気取ったり、高圧的にやり手を演じたりなど色々とあげられます。

このようなストレスは潜在的にいつも、免疫系を脅かし続けているのです。